レトロ 布張りソファ

本棚のついた学習机で育った僕は、大切なものはなんでも机の引出しにしまう生活をしながら大きくなりました。好きな曲をFMやレコードからカセットテープに録音して、ウォークマンで持ち歩くのが最先端だった頃です。

そしてシンプルな机を置いた部屋で学生時代を過ごします。僕はまだレコード中心の生活でした。大切なものを机の引出しにしまう癖は変わりません。流石にレコードは入りませんでしたが、友人と一緒に作った曲を録音したカセットテープがそこにはありました。

CDがレコードにとって代わり、僕の嗜好もフォークソングからハードロックに変わっていきます。変わらないのは部屋に鎮座するレコードプレーヤー。CDよりも音が柔らかい…なんてCDプレーヤーを買えない言い訳をしていたものです。ノイズだらけで音の柔らかさどころではなかったはずです。

会社に入り、手書きの資料を両脇に積み重ねて働く時期がしばらく続きました。たまに使うDOS-VのPCが新鮮だった記憶があります。やがてWindowsが現れ、マッキントッシュが異彩を放ち、PC全盛期に入っていきます。高性能なPCを部屋に鎮座させることが、ちょっとしたステータスの時代です。並行してノートPCを抱えて通勤することも普通になりました。そうそう、秋葉原で買ったノートPCを電車で持って帰ったのを思い出しました。部屋の本棚が飾りになり、通勤電車の中で読んでいた本を包んでくれたブックカバーも廃れてしまいました。

そんな時代がしばらく続き、タブレットがPCにとって代わり、ダウンロードにイライラしていたのが嘘のような高速通信が可能になりました。ダウンロードだけではなく、PCの時代はイライラが山積みだったような気がします。そうは言っても、一見優しい時代になった今は、ノイズすら感じられない冷たい空気が満載です。

本棚を捨てました。PCを無くしました。流石にスマホは排除出来ませんが、スチールキャビネットやレトロな布張りソファに囲まれたアナログ部屋にしました。パワポはおろかエクセルすら使う術がありません。

スチールキャビネットには、一本のカセットテープが大切にしまってあります。